5Gになるとどうなるのか:様々な報道や記事の通りになるの?

コラム
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  • 4Kの2時間映画を3秒でダウンロード可能
  • 超高画質の動画を外出先でも視聴できる
  • スタジアムでスポーツ観戦中、リアルタイムにARでも観戦
  • 通信の超低遅延を活かし、リモートで車を運転
  • 家中の家電100台がすべて5Gネットワークにつながり管理可能に

5Gが始まるとどうなるのかという記事やニュースでは、上記のようなことが実現するという話が盛りだくさんです。
技術面についてよく言われていることを簡潔にまとめると以下3つのことがあげられます。

  1. 通信速度の超高速化
  2. 通信がリアルタイムに(超低遅延化)
  3. たくさんの端末がつながるように

これら自体は総務省などからも要件として出されており、5Gの仕様的な特徴としては間違いはありません。
上記が理想通り実現すれば、冒頭に記載したようなことが現実化する可能性がある、ということになります。

ただ散見される記事や報道では、具体的な数値や実現へのハードルが明示されている場合が少ないのが実情です。

本稿では民間企業の状況や資料などから、5Gの実際の通信速度や低遅延、課題についてまとめてみます。

大前提として、サービス提供企業に割り当てられた電波帯を使った無線ネットワーク網が5Gであることを認識しましょう。
有線インターネットや無線LANなどとごっちゃにしないようにしてください。

総務省による5Gの技術的な要件

まずは、総務省から出されている5Gの仕様要件を簡単にまとめます。
引用:新世代モバイル通信システム委員会における5G技術的条件に関する検討状況

  • 通信速度   最高10Gbps
  • 遅延     1ミリ秒程度
  • 多数同時接続 100万台/平方キロメートル

上記はカタログスペックであり、我々が利用する5Gではこれが必ず達成できるわけではないということを認識しましょう。
これをふまえて、民間企業では5Gを以下のようなものとしています。

民間企業の5G対応

ドコモの場合

ドコモ5Gホワイトペーパーによると。(以下抜粋)

  • LTEと比較して100倍程度のユーザー体感データ伝達速度を実現すること。すなわち1Gbps以上のデータ転送速度を(中略)あらゆる環境で提供することが目標性能としてあげられる。
  • 屋内などの良好な無線環境でのデータ転送速度としては、10Gbps以上の実現がターゲットとして挙げられる。
  • 無線区間の遅延については、ほぼゼロともいえる1ms以下の実現が要求条件としてあげられる。

ドコモでは、通信速度10Gは理想値であり、概ね1Gbpsを目指すという事のようです。
また低遅延に関しては「無線区間の遅延」に限った内容となっています。

アメリカ、ベライゾン社の5Gサービス

実際に民間に提供が始まっているベライゾンの5Gサービスでは「ダウンロード速度は762Mbpsを記録したほか、Ping値は19ms」を実測値として計測できたとのこと。

引用:5Gはマジ速い! そこらの光回線を超える、実効速度で762Mbpsを計測 | ギズモード・ジャパン

ドコモやベライゾンの情報からわかること

実際の通信速度の上限目安について

ドコモの目標値が1Gbpsであり、サービスをスタートしているベライゾンの実測値が762Mbpsであったことなどから、理想値としてあげられている10Gbpsの通信速度は出ないでしょう。
概ね1Gbpsが、5G電波での通信速度の上限と考えておいてよさそうです。
※既存のNURO光の速度と同等

5Gでは、3秒で2時間の4K動画をダウンロードできるの?

では1Gbpsの通信速度の場合、3秒でどれぐらいのデータが転送できるでしょうか。

1Gbpsでは1秒間におよそ125MBを転送できます。(ビットをバイトに変換)

1Gbps = 0.125GB/s

1Gbpsの場合、3秒で転送できるデータ量は、およそ375MBとなります。

一方、4K画質の2時間の動画は当ブログのYouTube調査の結果では、概ね15Mbpsとなっていました。(こちらの記事を参照
15Mbpsの2時間の動画の容量は、およそ13.5GBとなります。

13.5GBを0.125GB/sで転送すると、100秒強かかることが分かります。
よって、民間企業の目標値を基準として考えると、3秒で4Kの2時間動画をダウンロードすることはできません

3秒間で転送できるデータ量は、
0.125GB * 3 = 375MB
ですから、2時間でこの容量の動画は、おおむね100Kbpsとなります。
2時間の動画を3秒でダウンロードするとした場合、100Kbpsの動画となります。
これは超低画質の動画です。

低遅延化について

可能だが高コスト

低遅延化については、技術的には可能です。
ただし、MEC(モバイルエッジコンピューティング)という技術を活用するケースが多くなるため、すべての通信で低遅延化を実現できるわけではありません
たとえば米国にあるサーバーの情報を日本国内の5G通信でダウンロードする場合、普通の方法では1ms遅延での転送は不可能です。(通常アメリカのサーバーから日本までデータを取り寄せるには200ms程度の遅延が発生します。)

MECの解説はほかに譲りますが、低遅延に関してはエッジコンピューティングなどを利用する必要があるため高コストになります。

まとめと当ブログの見解

通信速度と動画について

  1. 数秒で2時間の映画をダウンロードできるようにはなりません。
  2. ただし、1Gbpsの通信速度での動画視聴は現在の動画配信と比較すると非常に快適になります。動画視聴がスマートフォンでもスムースに行えるようになるでしょう。
  3. そもそも、5G回線を使ってデータを受信する端末、すなわち、一般的に普及しているスマートフォンで、4Kなど超高画質の再生は意味があるでしょうか。
    小さな画面で高解像度の動画を見るメリットは薄いです。

動画配信に関しては、スマートフォンのような小型の画面端末に対して無駄な高画質化を行わなければ、5G化の恩恵を多大に享受できるでしょう。
5G環境下では、スマートフォンでもストレスなくスムースに動画視聴が行えるようになります。

通信の超低遅延について

  1. 超低遅延化には高いコストが必要となるため、だれでも享受できる5G特徴にはならずユースケースを絞る流れになるでしょう。
  2. 医療や遠隔操作、安全を守るものなど、低遅延化にコストをかけても享受できるメリットが高いものが超低遅延化通信を採用していくでしょう。
  3. 動画(ライブ放送)に関しては、超低遅延化は難しいでしょう。
    →会場で撮影しているものをそのまま会場で配信する場合などは実現可能
    →遠くの会場で撮影されているものをスマホで超リアルタイムで見ることは難しい

5Gの利用には追加費用が発生する可能性大

先述のベライゾン社は、すでに5Gの提供を開始しています。
あまりうれしくない情報かもしれませんが、ベライゾンは5Gを利用するユーザーに別途追加費用を請求しています
よって、追加費用をしはらわないユーザーは5G電波を利用できません

日本国内でも、各携帯キャリアは5Gに向けて多額の投資が必要となっているため、この流れと同様になるのではないかと予想しています
初期段階では、概ね数千円の月額利用費増で5G電波帯が利用ができるようになるのではないでしょうか。

また、5G電波帯だけでなく、5Gにデータがのる前の有線インターネット網の通信トラフィックも増大します。
ですから携帯キャリアだけではなく、インターネットプロバイダーや各種サービス提供社に対する支払い増の可能性も考えられます

カタログスペックだけで5Gをとらえないようにしましょう

一般的な報道では、カタログスペックを元に、未来予想的なことをしています。
ただ、実際どうなるかという事を知らないとサービス提供側・5Gを活用した事業を作る側としては足元をすくわれかねません。

当記事が必ずしも正しいという事ではありませんが、一般的に報道されているような5Gの世界になることは難しいでしょう。
なれたとしても、かなりの時間とコストがかかるでしょう。

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